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千葉地方裁判所 昭和62年(ワ)199号 判決 1991年3月06日

原告

滝口勝征

滝口悦子

右原告ら訴訟代理人弁護士

渥美雅子

右同

村井瑛子

右同

大島有紀子

被告

千葉県

右代表者知事

沼田武

右指定代理人

山本文夫

外二名

右訴訟代理人弁護士

野口敬二郎

右同

原島康廣

主文

一  被告は、原告ら各自に対し、各金一八〇一万五七四二円及びこれに対する昭和六一年八月九日から各支払い済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一被告は、原告ら各自に対し、各金一九九〇万五八六一円及びこれに対する昭和六一年八月九日から各支払い済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告の設置している高等学校の相撲部合宿練習中、相撲部員であった原告らの子が熱中症を起こして死亡したとして、同事故が被告の公務員の安全配慮義務違反によるものであるとする国家賠償法一条一項に基づく損害賠償請求事件である。

一争いのない事実

1  (当事者)

被告は、千葉県立船橋豊富高校を設置、管理しており、白石芳照(以下「白石教諭」という。)は同校の教諭として勤務し、同校が特別教育活動の一環として行っている相撲部の顧問を務めている。原告らの次男亡滝口浩二(昭和六一年八月七日当時一六歳。以下「浩二」という。)は、昭和六一年四月同校に入学し、入学時から相撲部に入部していた。

2  (本件事故の経過)

(一) 浩二は、昭和六一年八月七日午後一二時三〇分ころ、千葉県立天羽高校における天羽高校、流山南高校等との相撲の合同合宿に参加するため、白石教諭に引率され天羽高校に到着した。船橋豊富高校の参加者は浩二のみであった。

(二) 浩二は、昼食を摂らずに練習に参加し、同校相撲部道場の外側校庭で一〇〇回の四股踏み、道場内での五分間の摺り足、流山南高校生三人及び中学生七人との勝抜戦、高校生一〇名との一〇番勝負(同じ相手と一〇回相撲を行うもの。)、大学生五、六人を相手にぶっつかり稽古を行った後、流山南高校教諭小川清彦に言われて、ぶっつかり稽古の相手である野中某の頭を冷やすため、合宿所内にある炊事場まで氷を取りに行った。

(三) 浩二は、道場に戻ってから、白石教諭の指示により、整理運動として、四股踏み(五〇回)を行ったが、浩二の足が十分に上がらず、その足許がふらついていた。次に、浩二は腰割(一〇回)を始めたが、途中でやめようとしたので、白石教諭はこれを続けさせた。しかし、浩二は再度途中でやめて今度は道場から出ようとし、白石教諭がこれを制止すると、浩二は尻餅を付くように寝転んでしまった。これを見ていた天羽高校教諭で相撲部顧問である山本啓一(以下「山本教諭」という。)が注意するため、道場の上り座敷に浩二を呼ぶと、浩二は起き上がり、同教諭によろけるように近づいたとき、上り座敷に手をついて山本教諭に寄り掛かるようになり、腰から座り込むように寝てしまい、更に唾を吐いた。白石教諭は、浩二が稽古を嫌がりだだをこねていると思ったが、浩二をそのまま寝かせておいた。

(四) 白石教諭は、他校の練習も終わり、道場の掃除をしなければならないので、浩二を起き上がらせ道場から連れ出そうとしたが、浩二は道場入口付近から突然走り出してグラウンドで倒れ、再び起き上がると、また走り出してネット裏付近で倒れた。白石教諭は、バケツ半分くらいの水を浩二の顔にかけたあと、しばらくしてから日陰になっている体育館北側のコンクリートのたたきに連れて行って寝かせ、浩二の回復を待った。

(五) 午後三時四〇分ころ、白石教諭は浩二に声を掛けたところ、浩二が嘔吐し、更に、浩二のまわしをとってみると、両手に一杯程度の下痢状の脱糞をしていたので、白石教諭は浩二に何らかの異常があると感じた。そこで、白石教諭は天羽高校の生徒二人と浩二の肩を支えてシャワー室に連れて行き、浩二の体を洗った(そのときも浩二は前回の半分程度の脱糞をした。)あとで、山本教諭と相談して天羽高校の近くにある天羽診療所に診療依頼をしようとしたが、同診療所が休診であることを聞き、午後四時ころ玄々堂君津病院に診療依頼をし、同病院から至急連れてくるようにと言われたので、午後四時四〇分ころ到着した救急車で浩二を同病院へ搬送した。浩二は午後五時一一分ころ同病院に到着し意識喪失の主訴と脱水症との診断で治療を受けたが、翌日午前四時二分に急性心不全により死亡した。

(六) なお、浩二は、稽古中から体育館北側たたきに連れていかれるまでの間、水分塩分の補給はしておらず、白石教諭は、浩二が倒れて以後、浩二の脈が速いことは確認し、前記のとおりグラウンドにおいて浩二の体に水を掛けているが、浩二の意識状態を確認するための措置(呼び掛けて反応を見るなど)や浩二の体を冷やすなどの措置は採っていない。

3  (損害の一部填補)

原告らは日本体育学校健康センターから医療費として一万二〇一二円及び死亡見舞金として一四〇〇万円を受領した。

4  (熱中症の発生機序・症状・治療方法)

熱中症は、高温環境下において体内の熱の、いわゆる産生に比して放散が阻害され体温が上昇したため起こる脱水、血液循環不全等に起因する障害の総称であり、原因、症状、障害の程度により熱疲労、熱痙攣、熱射病に分類される。熱疲労は、高温下での脱水によって起こり、全身の脱力感、倦怠感、めまい、悪心等が主な症状である。熱痙攣は、多量の発汗により水分及び血液中の電解質が失われ、電解質濃度が低下することによって生じ、突然随意筋の繊維性攣縮、疼痛を伴った痙攣が起こることが特徴である。熱射病は、熱中症の中で最も重篤で、異常な体温上昇(直腸温で四二度以上)により血液循環が不全となり、心機能が低下、脳の酸素不足による脳症の発症、中枢神経障害、臓器機能障害をきたすもので、症状は、頻脈、皮膚の紅潮、発汗の停止、頭痛、めまい、嘔吐から始り、運動障害、痙攣、不随意運動が著明であり、昏睡状態に至る。

熱中症の治療法は、体温を正常域に下げることであり、罹患が疑われる場合、まず意識の有無を確認し、意識がなければ、一刻も早く医師の診察を受けさせることが必要である。応急処置としては、衣服を脱がせ、体に水をかける、氷をあてる等して体を冷やすこと及び脱水症を防ぐため水分、塩分を補給することが必要である。

二争点

1  浩二が急性心不全を起こした原因は熱射病であるか。熱射病であるとすればその発症時期はいつか。

2  1が肯定される場合、白石教諭は、相撲場内で浩二が寝転んだとき、あるいは、突然運動場へ走り出して倒れたとき、浩二が熱中症に罹患していることを予見して、浩二が熱射病に罹患しているかどうかを確認(体温脈拍意識の有無の確認)し、熱射病の応急処置や病院への搬送を行うべき注意義務を負うか。

3  原告らの損害額

第三争点に対する判断

一熱射病罹患の有無及び時期について

1  熱中症を起こす要因には、環境要因として気温、湿度、風速、直射日光等が、個体要因として健康状態、体力、熱馴化の程度、水分塩分補給の有無が、運動要因として運動、労働の質、量、休憩の取り方があり、これらの諸要因が複合して熱中症は発症し、悪条件が重なった場合、必ずしも著しい高温あるいは直射日光に長時間晒されなくとも発症しうるものである(<証拠>)。

2  以下これらの諸要因を踏まえ、浩二が熱中症に罹患していたかを検討する。

(一) 昭和六一年八月七日午前九時の気温は27.2度、湿度は七五パーセント、風速2.3メートル、午後一二時の気温は29.6度、風速は2.8メートルであり、午後三時の気温は27.1度、湿度は七八パーセント、風速2.0メートル、午後六時の気温は26.6度、風速1.4メートルであったが(<証拠>)、この温度及び湿度は通常の運動を行う場合、熱中症発症の危険域であり(<証拠>)、本件事故の具体的環境をみるに、道場は三方に窓、残る一方に出入口があり(なお、東側及び正面にある明り採りの窓は開閉ができない。)道場南側に川が流れているが、窓及び出入口はさほど大きくなく(<証拠>)、通気が特によいとは考えられず、むしろ、事故当日は午前中に天羽高校相撲部が稽古をしており、引続いて浩二らが稽古をしていること及び当日の稽古の内容を考え併せると、道場内は相当熱気があったものとみるべきで、道場内の温度湿度が外気と比べ低かったとは認めえず、結局、事故当日の戸外及び道場内は熱中症が発症しやすい環境であったと認められる。

(二) 熱中症発症は、運動の質、量、馴れなどに大きく影響されるが(<証拠>)、これを浩二についてみると、船橋豊富高校相撲部は三年生が四人、二年生が二人、一年生が浩二を含め二人で構成されていたが、三年生及び二年生は試合に出るだけであり、浩二以外の一年生は退部を申出ており、平素は浩二が一人で練習することが多かったこと、クラブの時間は週二、三日で一回に一、二時間程度であったこと(<証拠>)を考えると、浩二が小学校四年生のころから相撲を始めており、また、高校入学後合宿を既に経験していた(<証拠>)とはいえ、未だ一年生であり運動への馴れが十分であったか疑問を禁じえず、前記第二の一(一)及び(二)で認められる本件事故に至る合宿時の稽古は平常の稽古に比較して相当運動の強度が大きいものであることは明らかである。

(三) 浩二が昼食をしておらず、稽古中塩分水分の補給を行っていなかった(<証拠>)ことは、熱中症の罹患可能性を増す要因である(<証拠>)。なお、解剖所見から浩二は生前下痢状態にあったことが窺われるとの証拠(<証拠>)があるが、母親である原告悦子はこれを否定しており(但し、お腹の具合が悪いから食事に気を付けるよう伝えた旨の<証拠>がある。)、熱中症に罹患し中枢神経障害が生じた結果下痢状態が生じることも考えられるから(<証拠>)、本件事故当時浩二が下痢状態であったとは断定しがたく、他に浩二の体調が悪かったことを認めるに足る事情はない。

(四) 浩二が玄々堂君津病院に搬送されたときの腋下温は39.9度であり(<証拠>)、腋下温に対し直腸温は一ないし三度高いのであるから(<証拠>)、浩二の当時の直腸温は四〇度を超えていたと考えられること、脱水症状、全身性痙攣、意識消失、見当識障害があったこと(<証拠>)が認められ、これらは熱射病の典型的症状であり、更に、浩二は道場内において二度、グラウンドにおいて二度ふらついて倒れていること、他校の顧問である山本教諭に対し唾を吐く、いきなりグラウンドへ駆出すなどの奇異な行動をとっていること等は、熱によって筋肉に不随意運動を起こした中程度の熱中症(熱痙攣)の顕れである可能性が高い(<証拠>)。なお、浩二の右のような行動につき単に練習を拒否しだだをこねていたと考えた旨の<証拠>があるが、浩二は右の行動を採るまでは熱心に練習していたこと、前記のとおり浩二は、小学校四年生のころから相撲に親しんでおり、相撲において道場内では礼儀が重視される(<証拠>)ことは十分知っていたと思われること等を考え合わせると、浩二は平素の練習においても嫌なことは割にはっきり言う方であった(<証拠>)としても、前記のような行動は浩二の性格からしても異常というべきで、浩二が意識的に採った行動とは認めがたく、白石教諭らが前記の各証言のとおり考えたとすれば軽率な判断であったといわざるをえない。また、白石教諭は、浩二が嘔吐し脱糞しているのに気付くまで、浩二に何等異常を認めえなかった旨証言するが、浩二の入院後の状態に照し、浩二がグラウンドで倒れてから、病院に搬送されるまで、浩二に体温上昇、痙攣、意識レベルの低下等の異常が発生していなかったというのは不自然と言うべきで、前記証言は信用できない。

(五) 右認定の本件事故当時の天羽高校相撲部道場の内外の環境、合同練習中の浩二の行動、玄々堂君津病院入院時の所見等を総合すると、浩二は熱中症に罹患していた可能性が高いと考えられること、更に、死後の解剖所見によれば、浩二は軽度の心筋炎及び慢性的肺鬱血の状態にあったが、それ自体で死を招くような重篤なものではなかったこと(<証拠>)、浩二の平素の健康状態は良好であったこと(<証拠>)、浩二の前記症状と同じ症状を発症させるてんかん、糖尿病等の病気の既往が同人にはなかったこと(<証拠>)。なお診療録(<証拠>)の記載に低血糖発作とあるが、<証拠>によれば、浩二の血糖値を検査してみたところ、低血糖でなかったが、保険請求の便宜のために右記載がなされたものである。)、結局、熱中症以外に浩二が急性心不全を起こした原因があったと認めるに足りる証拠がないことから言って、浩二が急性心不全を起こした原因についてはこれを熱中症に求めるのが自然である。

そしてその発症時期については、前記の認定に照らして、道場内部で浩二がふらついたり倒れたりした時点で、少なくとも中程度の熱中症(熱痙攣)に罹患しており、その後、グラウンドに放置され、また、体を冷やす等適切な措置が採られなかったために増悪し、救急車で病院に搬送されたときには熱射病の段階に至っており、その後、これが原因で急性心不全を起こしたものと認定することができる。

二注意義務・過失の存否について

1 課外クラブ活動は学校教育活動の一環として行われる以上、学校設置管理者は生徒の生命、身体の安全をはかる義務があることは言うまでもなく、課外クラブ活動として行われる合宿においては、学校設置管理者の履行補助者たる顧問教諭は、部員の健康状態に留意し、運動中、部員に何等かの異常を発見した場合、速やかに容体を尋ね、応急処置を採り、必要な場合には医療機関による処置を求めるべく手配する注意義務を負うところ、その具体的な内容・程度は、運動の内容、環境、部員の運動に対する習熟度、顧問教諭のクラブ活動に対する関与の在り方等を総合考慮して決せられるべきである。

2 被告は、本年の注意義務について、熱中症は最近知られるようになった病気であること、白石教諭は熱中症に関する専門的知識がなかったこと、浩二は高校生であり異常があれば自らそれを申し出る等が期待しえ、浩二がそれをしていないことからして、白石教諭には浩二の熱中症罹患について予見可能性がなかった旨主張する。

しかしながら、熱中症という言葉は比較的新しいものであるにしても、それとほぼ同義の熱射病ないし日射病という語は高温又は直射日光下において運動・労働等をするときしばしば見られる疾患として一般に広く知られており、熱中症はそれらを包括する概念に過ぎないのであって、日射病及び熱射病は、その発生機序、予防法、治療法等の専門知識にわたる部分はともかく、体を冷やす、水分塩分を適宜補給することが予防法及び応急措置として、効果的であることは周知のことと言うべきである(<証拠>、なお、意識障害等の重度の異常がでれば、その原因が判っているかを問うまでもなく医療機関に搬送すべきことは言うまでもない。)から、この点に関する被告の主張は採用できない。

そして、予見可能性がないとの被告の主張の他の根拠については、本件事故発生時の環境は前記のとおり高温多湿で客観的に熱中症発症を予想しうる状態にあること、一般に運動中の生徒が気分が悪くなる、あるいは熱中症になることは決して稀ではなく、相撲についても同様であること(<証拠>)、浩二は高校一年生であり部活動に参加して間もないこと、浩二は白石教諭に引率されて他校に行ったのであり、平素の浩二の体調等を知るのは白石教諭以外にいなかったこと、相撲はかなり激しい運動であること(<証拠>)、白石教諭にとり浩二が練習をやめたがっていると思わせる言動を浩二がとっているのに、白石教諭は特に理由を聞くこともなく練習を続けさせていること(<証拠>)及び前記認定の諸事実を総合考慮すれば、白石教諭が浩二の熱中症罹患を本件当時予見しえなかったと認めることはできず、結局、白石教諭は、浩二の熱中症を予防するため、同人に異常がないかを注意し、水分塩分の補給を図り、熱中症に罹患した場合、前記応急措置を採る外、意識喪失等更に重度の障害が見られれば、直ちに医療機関へ浩二を搬送すべき義務があったものと認めるのが相当である。

3 そして、その時期であるが、浩二が道場内で倒れたりした時点については、浩二は合宿参加を渋っていたこと及び平素も練習を嫌がることがあったこと(<証拠>)からして、直ちに熱中症罹患を疑うべきであったとは認めえないが、浩二が道場から走りだし倒れた時点については、練習が終わっていた以上、浩二がこのような行動をする合理的な事情はなかったのであるから、右時点において、白石教諭は、前記注意義務を尽くすべきであったとみるのが相当である。

しかるに、白石教諭は、日向のグラウンドに少なくとも三〇分ないし四〇分浩二を寝かせておき、午後二時ころに浩二を体育館脇のたたきに移動させたが、この間浩二に対する応急措置を行っておらず、浩二の異常に気付いたのが午後三時四〇分ころであることは前記のとおりであるから、右事実を考え併せると、稽古中気分が悪くなる者もあるが、一時間程寝かせておけば回復していたという白石教諭の経験(<証拠>)に照しても、同教諭が浩二を寝かせておいた前記の状況及び時間は著しく不適切であったと言わざるをえず、白石教諭には前記注意義務違反があったものと認めざるをえない。

4 結局、本件事故は、被告の公務員が公務の執行につき過失があり、その結果発生したものと認定されるので、国家賠償法一条一項にしたがい、被告は原告らが受けた損害の賠償義務があることになる。

三損害額

1  逸失利益

浩二は死亡当時一六歳であって、一八歳から六七歳までは稼働可能であり、その間昭和六一年賃金センサス第一巻産業計・企業規模計・学歴計男子労働者計の年収額四三四万七六〇〇円を基礎に計算した額の収入を得られたと推認することができる。その間の浩二の生活費割合は五割とみるのが相当である。よって、右を基礎にライプニッツ式計算方法で求められた浩二の死亡による逸失利益の現価は三五八二万三一三七円〔4347600×0.5×(18.3389―1.8594)〕となる。

2  医療費

浩二の治療に要した医療費のうち同人の負担分は、二万〇三六〇円であることが認められる(<証拠>)。

3  葬儀費用

浩二の葬儀費用一六一万六一一一円(<証拠>)のうち一〇〇万円が本件事故と相当因果関係にある損害と認めるのが相当である。

4  慰謝料

以上認定の諸般の事情を考慮すると、浩二の慰謝料は一〇〇〇万円を下らないものと認定するのが相当である。

5  損害額及びその一部の填補

以上の合計額は四六八四万三四九七円であるところ、原告らは浩二の父母であるから右損害額を二分の一ずつの割合により相続したので、被告が原告らに対し賠償すべき損害額は、各二三四二万一七四八円となるが、原告らが損害の填補として受領した金員(前記の合計一四〇一万二〇一二円を按分した各七〇〇万六〇〇六円)を控除すると、被告が原告らに対して賠償すべき損害額は、各一六四一万五七四二円となる。

6  弁護士費用

本件事案の難易、訴訟の経過、認容額、請求額等を考慮して、本件事故と相当因果関係にある弁護士費用相当の損害は、原告らにつき各一六〇万円と認めるのが相当である。

7  合計額

原告らの損害合計は各一八〇一万五七四二円となる。

第四結び

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官上村多平 裁判官高橋隆一 裁判官副島史子)

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